認知症について|【公式】神宮前駅こころのクリニック|熱田区神宮前駅の心療内科・精神科

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認知症について

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認知症について

認知症について

認知症は高齢になるにしたがって増加し、超高齢社会の日本では約460万人(65歳以上の高齢者の約15%)が認知症を患っているとされています。今後も高齢化が進み認知症の人は増えていくことが予想されています。
認知症では、物事を覚えられない、今までできていたことができなくなるといった認知機能の低下による症状(中核症状)ばかりでなく、イライラしやすい、怒りっぽく攻撃的になる、妄想や徘徊などの症状(認知症の行動・心理症状(BPSD)とよばれます)もみられます。
治療としては、認知症の中核症状の進行を予防していく治療と、認知症の行動・心理症状(BPSD)の治療があげられます。
また、認知症に至る前に、その前段階である軽度認知機能障害(MCI)という、将来認知症に移行する危険の高い状態が指摘されています。MCIは、もの忘れなどの認知機能低下の症状が見られるものの日常生活は基本的には自立しており、認知症ではない状態として定義されます。年齢相応の認知機能の衰え(年相応の物忘れの範囲)と、認知症の間の状態とされ、MCIの段階で原因となっている病気を診断し、その後の治療方針(薬やケア、リハビリなど)を立てることが大切です。

認知症の原因となる病気は色々あります。様々な病気により認知機能をつかさどる脳の機能が持続的に障害されることによって、認知機能が低下し認知症を発症します。病気によらない正常範囲の脳の老化によっても、いわゆる`年齢相応のもの忘れ`は誰にでも起こりますが、これは認知症へと進行していく病的な`もの忘れ`とは異なります。
認知症の原因となる病気でもっとも多いのはアルツハイマー病で、認知症全体の6割程度を占めます。高齢者にみられる通常のアルツハイマー病では遺伝的な素因と後天的な因子(生活習慣や生活習慣病など)の両者が複合的にリスクになって発症するものと考えられています。
次いで多いと言われるのが血管性認知症でその次にレビー小体型認知症があげられます。血管性認知症は脳出血、脳梗塞など脳の血管の障害で脳が損傷されることでおこります。レビー小体型認知症では、脳の神経細胞にαシヌクレインというタンパク質がレビー小体と呼ばれる構造をつくって蓄積することにより神経細胞が障害されることが原因となります。頻度は下がりますが、この他に前頭側頭葉変性症(前頭側頭型認知症、Pick病などを含む)などがあります。
また根本的な治療が可能な認知症(認知症様の症状のおこる疾患)もあります。甲状腺機能低下症では、意欲低下などがおこり認知症の重要な鑑別疾患になります。また精神科領域でも、うつ病は認知症と区別がつきにくいような症状(意欲低下、思考が遅くなる、活動性が低下するなど)があり鑑別が重要です。また遅発性パラフレニーという精神科領域の疾患は認知症や認知症に伴う行動・神経症状(BPSD)との鑑別が必要になります。その他パーキンソン病等の神経変性疾患との鑑別が必要になります。
慢性硬膜下血腫正常圧水頭症といった病気では、脳神経外科で手術治療を行えば症状が著しく回復することがあります。

認知症の症状

中核症状

認知機能の障害を指します。認知症の原因としてもっとも多いアルツハイマー病についてみると、初期から最も目立つ症状は記憶力の低下です。記憶力の低下は年齢を重ねれば誰にでも起こるものですが、アルツハイマー病では、最近の出来事(エピソード)についての記憶が著しく低下することが特徴です。例えば、`昨日、友人と買い物に行った`という出来事があった場合、行った店の名前が中々思い出せないというのは正常でもみられることですが、友人と買い物に行ったこと自体を忘れてしまうのは病的です。進行すると、日時や場所が分からなくなり(見当識の障害)、物事を理解し判断する力が低下していきます。さらに、日常的に行う簡単な家事などの手順が分からなくなったり、近所でも道に迷ってしまうといった症状も出てくるようになります。

認知症の行動・心理症状(BPSD)

BPSDは「認知症の行動と心理症状」を表わす英語の「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の頭文字を取ったもので、中核症状に対して「周辺症状」と言われることもあります。暴言や暴力、興奮、抑うつ、不眠、昼夜逆転、せん妄、徘徊、幻覚妄想(物盗られ妄想などが代表的)など様々な症状がみられます。
暴言、暴力、幻覚妄想というほど激しくなくても、以前は穏やかな人だったのに、「怒りっぽくなった」「すぐにイライラして周囲の人と衝突してしまう」「疑り深くなって、攻撃的な言葉が増えた」といった、「元々のその人の性格」と比べ「性格が変わってしまった」という時は、BPSDの可能性を考える必要があります。
認知機能の低下がまだ比較的軽い時期におこることが多いため、記憶もまだしっかりしているのに(認知症のようには見えないのに)家族や介護者が対応に苦慮することが多くなります。むしろ中核症状の「もの忘れ」等より、BPSDの方が生活への影響が大きくなることが多いようです。

また、若い頃からの経過を聞くと今まで診断されてこなかった気分障害(特に双極性障害の要素のある)があったり、今の症状が高齢発症の気分障害が多い印象を受け、こうした視点からの治療が有効な場合があります。

検査・診断

症状の経過から認知症が疑われる際には、認知機能ばかりでなく、運動や感覚などを含め脳神経系全体の異常を把握するための診察(`神経学的診察`といいます)を行います。その次に、以下のような検査を実施します。

認知機能検査

記憶、注意、計算、言語などの認知機能を調べるための検査です。診察時には長谷川式簡易知能評価スケール(改訂版)(HDS-R)、ミニメンタルステート検査(MMSE)などの簡易検査を行います。

血液検査

甲状腺ホルモンなどのホルモンの異常、ある種のビタミンなどの栄養素の異常、肝臓病などによる代謝の異常、梅毒などの感染症などによって、認知機能の低下をきたすことがあります。それらを血液検査によってチェックします。

画像検査(当院では実施していません)

脳の状態をチェックするために、頭部CT、MRI検査などで異常(萎縮、脳梗塞・出血など)の有無をみます。
また、脳の機能を調べるために、SPECT検査で脳の血流を、PET検査で脳の代謝の異常を調べます。

治療

治療は、認知症の原因となっている病気によって異なります。治療の種類には、薬による薬物療法と、ケアやリハビリテーションによる治療があります。

中核症状に対しての治療

アルツハイマー病やレビー小体型認知症のように、脳の中に異常なタンパク質の蓄積がみられ神経細胞が徐々に障害されていく病気では、残念ながら現時点では、根本的な治療効果がある治療薬で承認されているものはありません。しかし、症状の進行を抑えていく薬剤を用いた治療を行うことができます。
※ 当院でも行なっています。

血管性認知症では、脳梗塞や脳出血などの脳血管の病気(脳血管障害)で脳が損傷されています。そのため、脳血管障害の原因となる、高血圧・糖尿病・脂質異常症・不整脈などの病気をきちんとコントロールし、脳血管障害の再発を防ぐ治療をすることが大切です。

前に述べたように、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症など、脳外科的治療で治る病気、ホルモンの異常など、内科的治療で治る病気がありますので、そうした認知症の原因を見逃さないようにすることが大切です。
※ 身体的な原因がある場合の認知症の治療や、進行予防の治療は内科、各専門領域の科でお願いします。

BPSDに対しての治療

また、行動・心理症状(BPSD)が強く現れて困っているような場合には、本人の苦痛に加え家族の負担も非常に大きくなります。もともと温和で穏やかだった方が、人が変わったように怒りっぽくなる、イライラする、猜疑的になる、幻覚妄想(物盗られ妄想など)などのため、一緒に生活していくことが難しくなるようなケースも多くあります。
ケア面の整備を行うとともに、原因を検討するとともに、必要に応じ症状を軽減するための薬物治療をおこなうことがあります。
※ 精神科、老年精神科が主に診療する領域になります。